大山寺秘話


〜〜〜 引き裂き地蔵 〜〜〜


境内に上がる石段の手前に、小さなお堂があり、口に紅を差したお地蔵様が
座っている。少しうつむいたお顔は、憂いを帯びて見える。
このお地蔵さんには、悲しい逸話が残されている。


江戸の昔、参拝道の茶屋に豊後(大分)から奉公に来ていた娘さんがいた。
たいそう気立てが良く、可愛らしい娘さんで、
茶屋の看板娘だったそうな。
地元の人からも、お遍路さんからも、慕われていたそうだ。
この娘さんに、地元の若い衆も心を奪われた。

ある時、和気(わけ)の力持ちと、三津浜の相撲取りが、
同時に娘さんに言い寄った。
娘さんは、一人に決めかねて困り果てた。

あげくに、
「そんなに言うのなら、右と左に分かれて、
私の腕を引っ張って下さいな。
力の強い方に嫁に行きましょう」
と、言ってしまった。

二人の男は、左右から力の限り娘さんの腕を引っ張った。
「痛い、堪忍して!!」
と叫んでも、男達は力を緩めようとしなかった。

とうとう娘さんの体は、半分に引き裂かれてしまい、
絶命してしまった。
娘を哀れに思った地元の衆が、
観音様の元で慰めてあげようと思い建立したのが、
このお地蔵さんである。

誰が口紅を塗ってあげているのか知らないが、
いつも鮮やかな紅が、
うつむき加減のお顔に映えている。


〜〜〜 三光鳥(さんこうちょう) 〜〜〜

『つき、ひ、ほし、ほいほいほい』
何とも愛嬌のある泣き声である。

大師堂の上の大きな木から聞こえてくる。
声のする方を眺めて見るのだが、
その姿を見つけるのは難しい。


もう一度、泣き声が聞こえた。
今度は、その姿を見つけることができた。
黒っぽい、ツバメほどの大きさの小鳥である。

ツバメと異なるのは、その尾羽の長さである。
体の3〜4倍はあるだろう。
時折、その尾羽を上下に振っている。
これが何とも優雅である。

黒っぽく見えた色は、
光の当たり具合で瑠璃色に光る。

長年境内のお守りをしてきたお爺さん曰く、
「ツバメより遅く来て、ツバメより早く帰る」
と言う。

恐らく、フィリピンやベトナム以南からの
渡り鳥ではないかと想像する。

松山の近郊でも数か所でしか
営巣が確認されていないそうだ。

大山寺の山は、人の手の入っていない
数少ない森なのだろう。

来年もまた、その声を聞く事ができるだろうか。

(2003.08.17)


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